留が入り三日目になると麹のエキスをタップリ吸った蒸し米が姿を現し
地殻変動が起きたかのように大小の亀裂が入り始める。
酒造りは麹と酵母の動きを見守りそっと寄り添う事なのだ。
二週間後に迫った槽かけの準備がはじまった。
自分たちが直接触れる部分と触れない部分も含めて動き回る範囲の全てを拭き清める。
米を磨き酒を磨く前に、まずは場所や道具磨きから始まるのが酒屋の常だ。
一櫂入魂
美味しいの一言を求め握る櫂に力がこもる
櫂を伝い蔵人の魂が酒母に入り込んでいく瞬間だ
木枯らしが吹き荒れた翌日、冬化粧をした鳥海山がくっきりと姿を現しました。
四季折々に表情をかえる鳥海山の、この時期の姿は格別と言っていいほど美しいものです。
この冬はどんな冬になるのかは、この姿からは占うことが出来ませんが
鳥海山の表情の変化を楽しみながら一冬の酒造りに励みたいと思います。
米が蒸し上がる三分ほど前、白衣に着替えた蔵人達が釜場に集り
甑からもうもうと立ち上がる湯気を眺めながらしばしの雑談。
まだ蔵人全員が揃ってはいないのだが、例年になく早く始まった仕込みは新しい時代の幕開けか。